弊社初の自社サービスとして「LINE ミニアプリを利用したテイクアウトシステム」を運用していたのですが、、今年大人の事情でクローズしました。
記憶が風化する前に紆余曲折や LINE プラットフォームの感想についてまとめましたので、ミニアプリ開発を検討されてる方々の参考になれば幸いです。
要約 (ChatGPT)
- LINE公式アカウントでテイクアウト注文を可能にした
- システムは3つのアプリで構成
- 2020年7月にプロジェクト開始、2021年5月に実店舗での運用開始、2022年12月にミニアプリ版リリース、2023年8月にサービス終了
- LINEプラットフォームは低い導入障壁と使いやすさが強みであり、複雑な業務システムにも応用可能と感じた
どのようなサービスか?
今では普通になりましたが、店舗の LINE 公式アカウントに Uber Eats のようなテイクアウトシステムを簡単に導入できる、というサービスです。
サービスの構成
以下の 3種類 のアプリケーションでサービスを実現しています。
ユーザ | アプリ |
---|---|
注文者 | LINE ミニアプリ (Web) |
店舗側 | 管理画面 (Web) |
店舗側 | タブレットアプリ (Flutter) |
プロジェクト概要
時期 | 内容 |
---|---|
2020/7 | プロジェクトスタート |
2021/5 | 実店舗での運用開始 |
2022/12 | ミニアプリ版リリース |
2023/8 | クロージング |
体制
- 営業 1名
- 開発 1名 (自分)
コロナ禍初期 2020/7 頃にこのような体制でプロジェクトをスタートしました。テイクアウトサービス自体はいろいろありましたが LINE を使ったサービスはまだまだ少なかった印象です。
そして弊社初の自社サービスであり、経験豊かな PdM が在籍しているわけでもない、開発は1人で3種類のアプリケーションを並行作業で作る、手探りで進めていくかなりチャレンジングなプロジェクトでした。
LINE プラットフォームを選択した理由
まず、LINE プラットフォームでは以下のアプリケーションが作成可能です。
種類 | 概要 | 審査 |
---|---|---|
LINE Bot | チャットボット トーク画面上で動作 |
不要 |
LIFF | Webアプリ リッチメニューやリンクから起動 |
不要 |
ミニアプリ | Webアプリ リッチメニューやリンクから起動 LIFF の上位互換 |
必須 |
LINE アプリがインストールされていればすぐに動作可能なので、ネイティブアプリに比べると「導入コストが非常に低い」というのが大きなメリットになります。それが決め手になり「今回は LINE プラットフォームで実現しよう」となりました。
紆余曲折
beta1
本サービスは最初からミニアプリ版を作成したわけではなく、実際にはこのようなバージョンアップを経ています。
バージョン | 種類 |
---|---|
beta1 | LINE Bot のみ |
beta2 | LINE Bot + LIFF |
製品版 | ミニアプリ |
開発当初は「会話ベースで簡単に注文できること」を非常に大事なポイントにしていました。EC サイトでよくあるシンプルな購入フローよりも「LINE UI による会話形式」のほうがユーザフレンドリーであると考えたからです。それもあって「まずはチャットボット形式で実現しよう」となり、beta1 が完成します。
beta1 → beta2
最初の課題に直面しました。
飲食店のようにメニューが多い場合は「トーク画面上でのメニュー表示がむずかしい」という点です。当時は Flex Message を利用して大量のメニュー表示を実現していました。
画像のようなテンプレートを利用してメニュー1つ1つを表示。メニューが少ない場合は非常に良い UI なのですが、多い場合は一気に使いにくい、見にくい。大量メニューの閲覧は Web が最適では・・という理由で、
- メニュー選択フローは Web (LIFF) で
- 決定フローは Bot で
という beta2 形式に変更となりました。
beta2 (店舗導入時)
この形で実店舗への導入を開始したのですが、すぐに大きな課題が発覚。
導入時の「店舗担当者の作業難易度が高い」という点です。具体的には「Developer Console を触るハードルが高い」ことです。
店舗側の LINE 公式アカウントに Bot 機能を取り込む場合、「Developer Console のトークン情報」などが必須となります。
開発者向けサイトなのでそれなりに IT リテラシーが求められますし、そもそも難しい画面を触っていただくのが申し訳ない、という想いがありました。
我々が代行作業すればよいのですが、店舗が増えれば増えるほど作業コストが高い。「Bot を利用する=店舗側の Developer Console 必須」なので、
- Bot での運用を止めて LIFF だけにできないか?
- それならいっそミニアプリ化したほうがいいのでは?
という案が出始めました。
製品版 (ミニアプリ化)
https://developers.line.biz/ja/news/2022/06/01/line-mini-app-pre-examination
そんな議論をしている最中の「LINE ミニアプリの事前審査がなくなる」というこのプレスリリース、かなりビッグニュースだったのを憶えています。
「検証すら難しかったミニアプリ」が検証可能になったので、すぐにサンプルを作って検証開始 →「ミニアプリで行こう」という結論になりました。
これで店舗担当者は、
- 公式アカウントのリッチメニューに「ミニアプリ URL」を貼り付けるだけ
- Developer Console を開く必要もない
というシンプルな導入フローを実現できました。
LINE プラットフォームを使用して感じたこと
会社の方針でサービスをクローズすることにはなりましたが、、冒頭でも述べた「導入障壁が低く、ユーザへ提供しやすい、すぐに価値を届けることができること」はかなり強い部分だと思いました。
LINE を使ったサービスは個人的にいくつか運用しているのですが、個人サービスレベルではなく、複雑な業務システムでも利用できることが体感できましたし、「サービス開発の最初の一手目」として相性が良いと改めて感じました。
というわけで悔しい決断をすることになりましたが、この知見を早速次のサービスに活かそうと思っております。